2026年は、住宅ローンを取り巻く環境が大きく動いた年です。日銀は6月に政策金利を1.00%へ引き上げ、約31年ぶりの水準になったと報じられました。これを受けて各銀行の変動金利は順次引き上げられ、固定金利も上昇しています。この動きは、ローンが残る家の個人間売買に二つの影響を与えます。
一つ目は、買主側の資金計画です。個人間売買では、買主が住宅ローンを利用しようとしても、銀行から宅地建物取引士による「重要事項説明書」の提出を求められることが多く、仲介会社なしでは融資審査の入り口に立てない場合があります。当事務所のように宅地建物取引士を兼ねる事務所であれば、売買契約書や重要事項説明書の作成を通じて融資の道筋をつくるお手伝いが可能です。金利が上昇局面にある今は、審査に時間がかかるほど適用金利が変わってしまうリスクもあるため、買主の資金調達は契約前の最初期に検討しておくべき項目になりました。
二つ目は、価格設定と税金の問題です。特に親子間・親族間の売買では、「ローンさえ完済できればいいから」と残債額ぴったりの価格で売ってしまいがちです。しかし、その価格が時価より著しく低いと、差額部分が税務上「みなし贈与」と扱われ、買主に贈与税が課されるおそれがあります。名古屋市内では地価の上昇により、「十年前の購入価格=今の時価」とは限らなくなっています。残債基準ではなく時価基準で価格を検討すること、迷う場合は税理士とも連携して進めることが、後日の思わぬ課税を防ぎます。
また、売主側にも、売却益が出れば譲渡所得税の申告が必要になり得ます。マイホームの売却には3,000万円の特別控除という強力な制度がありますが、親子間や夫婦間など特別な関係にある人への売却には適用されないという重要な例外があります。誰に売るかによって税負担が大きく変わるのが個人間売買の特徴ですので、この点は必ず事前にご確認ください(税務の詳細は税理士の専門領域のため、当事務所では提携税理士と連携してご案内しています)。
よくあるご質問
Q1.ローンを完済しないと売買契約も結べないのですか? いいえ、契約自体は残債があっても締結できます。実務では「決済日までに抵当権を抹消できる状態にする」ことを契約条項に盛り込み、決済当日に完済・抹消・移転を同時に行います。契約書にこの条項を正しく書けるかどうかが専門家の腕の見せどころです。
Q2.オーバーローン(残債が売買価格を上回る)の場合はどうなりますか? 不足分を自己資金で補って完済できれば、通常どおり売買できます。自己資金での補填が難しい場合は、銀行の同意を得て売却する「任意売却」という方法を検討することになります。状況によって進め方が大きく変わるため、早めにご相談ください。
Q3.買主が代金を分割で支払うことはできますか? 親族間などでは分割払いの希望がよくありますが、売主のローンを完済できない期間が長く続くうえ、税務上の注意点もあり、慎重な設計が必要です。銀行への相談、公正証書の作成、場合によっては新たな担保設定など、個別の事情に応じた組み立てをおすすめします。