住宅ローンが残っている家でも個人間売買はできる?名古屋の司法書士が「抵当権」と決済当日の流れをやさしく解説
ごとう司法書士事務所
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ローンが残る家の売買で大切な、三つのポイントを順にご説明します。
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住宅ローンが残っていても売買できる? ― 鍵は「抵当権の抹消」にあります

住宅ローンを組んで家を買うと、お金を貸した銀行は、その家に「抵当権」という担保の権利を設定します。抵当権は登記簿の「権利部(乙区)」に記録されており、誰でも法務局で確認できます。ローンを完済しない限り、この抵当権は登記簿に残り続けます。

大切なのは、「抵当権が付いたままでも売買契約自体はできるが、抵当権が付いたまま買主に引き渡してはいけない」という点です。もし抵当権を残したまま所有権だけを移してしまうと、万一元の所有者がローンの返済を止めた場合、銀行は抵当権を実行して家を競売にかけることができます。代金を支払って家を手に入れたはずの買主が、家を失ってしまうおそれがあるのです。個人間売買のトラブルのなかでも、これは最も深刻な部類に入ります。

そこで実務では、「売買代金でローンを完済し、抵当権を抹消したうえで、所有権を買主に移す」という段取りを組みます。ここで一つの分かれ目になるのが、売買価格とローン残債の関係です。売買価格が残債を上回る状態(いわゆるアンダーローン)であれば、代金で完済できるため手続きは比較的スムーズです。逆に売買価格が残債に届かない状態(オーバーローン)の場合は、不足分を自己資金で補うか、銀行と別途の相談が必要になります。

名古屋では幸い、2026年の公示地価で愛知県の住宅地が前年比プラスとなるなど、中心部を中心に地価の上昇が続いています。「購入時より値上がりしていて、思ったより残債との差がなかった」「むしろアンダーローンだった」というケースは、名古屋市内では珍しくありません。まずは銀行に残債額を確認し、固定資産税評価額や近隣の取引相場と見比べてみることが第一歩です。

なお、売却の方針が決まったら、できるだけ早い段階で借入先の銀行に「売却して完済したい」と伝えてください。銀行側も一括返済の手続きや抹消書類の準備に数週間程度を要するのが通常で、この事前連絡を怠ると決済日を組めません。

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決済当日の流れ ― 「同時決済」がお金と権利の安全を守ります

住宅ローンが残る家の売買で、実務の心臓部にあたるのが決済(残金支払い)当日の段取りです。この日に行われることを順に並べると、次のようになります。買主が売買代金を支払う、売主がその代金で銀行にローンを一括返済する、銀行が抵当権抹消に必要な書類を交付する、そして司法書士が「抵当権抹消登記」と「所有権移転登記」をまとめて法務局に申請する――これらすべてを同じ日に、事実上同じテーブルの上で行うのです。

なぜここまで厳密に「同時」にこだわるのか。それは、どこか一つでも順番が狂うと、誰かが大きなリスクを背負うからです。代金を払ったのに抵当権が消えなければ買主が危険にさらされ、登記だけ先に移して代金が払われなければ売主が困ります。そこで決済の場では、司法書士が事前にすべての書類を確認し、「本日、間違いなく抹消と移転の登記ができます」と確認してから、はじめて買主に送金のゴーサインを出します。銀行が関与する不動産取引で司法書士の立会いが必ず求められるのは、この「引き換えの安全」を担保するためです。

先日も、名古屋市内の戸建てを、転勤で手放す方からご近所の顔なじみのご家族が買い取るというご依頼がありました。売主には約800万円のローンが残っていましたが、事前に銀行と完済日の調整を行い、決済当日は買主からの代金のうち残債分をそのまま銀行口座へ、残りを売主へという流れをその場で完結させ、抵当権抹消と所有権移転を同日に申請しました。買主のご主人は「知り合い同士だからこそ、お金のことはきっちり第三者に見てほしかった」とおっしゃっていましたが、まさにこれが個人間売買における専門家活用の本質だと感じています。

仲介会社を入れない個人間売買では、この決済の場を設計する人が誰もいません。当事者同士で「先に振り込むから、書類はあとで」といった約束をしてしまうと、善意同士でも取り返しのつかない事態になりかねません。ローン残債がある売買では、少なくとも決済と登記の部分は司法書士に依頼することを強くおすすめします。

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金利上昇時代の注意点 ― 買主の資金計画と税金の落とし穴

2026年は、住宅ローンを取り巻く環境が大きく動いた年です。日銀は6月に政策金利を1.00%へ引き上げ、約31年ぶりの水準になったと報じられました。これを受けて各銀行の変動金利は順次引き上げられ、固定金利も上昇しています。この動きは、ローンが残る家の個人間売買に二つの影響を与えます。

一つ目は、買主側の資金計画です。個人間売買では、買主が住宅ローンを利用しようとしても、銀行から宅地建物取引士による「重要事項説明書」の提出を求められることが多く、仲介会社なしでは融資審査の入り口に立てない場合があります。当事務所のように宅地建物取引士を兼ねる事務所であれば、売買契約書や重要事項説明書の作成を通じて融資の道筋をつくるお手伝いが可能です。金利が上昇局面にある今は、審査に時間がかかるほど適用金利が変わってしまうリスクもあるため、買主の資金調達は契約前の最初期に検討しておくべき項目になりました。

二つ目は、価格設定と税金の問題です。特に親子間・親族間の売買では、「ローンさえ完済できればいいから」と残債額ぴったりの価格で売ってしまいがちです。しかし、その価格が時価より著しく低いと、差額部分が税務上「みなし贈与」と扱われ、買主に贈与税が課されるおそれがあります。名古屋市内では地価の上昇により、「十年前の購入価格=今の時価」とは限らなくなっています。残債基準ではなく時価基準で価格を検討すること、迷う場合は税理士とも連携して進めることが、後日の思わぬ課税を防ぎます。

また、売主側にも、売却益が出れば譲渡所得税の申告が必要になり得ます。マイホームの売却には3,000万円の特別控除という強力な制度がありますが、親子間や夫婦間など特別な関係にある人への売却には適用されないという重要な例外があります。誰に売るかによって税負担が大きく変わるのが個人間売買の特徴ですので、この点は必ず事前にご確認ください(税務の詳細は税理士の専門領域のため、当事務所では提携税理士と連携してご案内しています)。

よくあるご質問

Q1.ローンを完済しないと売買契約も結べないのですか? いいえ、契約自体は残債があっても締結できます。実務では「決済日までに抵当権を抹消できる状態にする」ことを契約条項に盛り込み、決済当日に完済・抹消・移転を同時に行います。契約書にこの条項を正しく書けるかどうかが専門家の腕の見せどころです。

Q2.オーバーローン(残債が売買価格を上回る)の場合はどうなりますか? 不足分を自己資金で補って完済できれば、通常どおり売買できます。自己資金での補填が難しい場合は、銀行の同意を得て売却する「任意売却」という方法を検討することになります。状況によって進め方が大きく変わるため、早めにご相談ください。

Q3.買主が代金を分割で支払うことはできますか? 親族間などでは分割払いの希望がよくありますが、売主のローンを完済できない期間が長く続くうえ、税務上の注意点もあり、慎重な設計が必要です。銀行への相談、公正証書の作成、場合によっては新たな担保設定など、個別の事情に応じた組み立てをおすすめします。

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