住宅ローンと「適正価格」。ここが元夫婦間売買の分かれ道
住宅ローンが残っている家は、財産分与の名義変更が簡単にはできません。ローン契約では、金融機関の承諾なく名義を変えることが禁じられているのが通常だからです。「夫名義のローンを夫が払い続け、妻子が住む」という約束もよく見かけますが、将来ご主人の支払いが滞れば、住んでいる家が競売にかけられるおそれがあり、住む側にとって実はとても危うい形です。
そこで検討したいのが、住み続けたい側が家を「買い取る」個人間売買です。ご自身の名義でローンを組み直して残債を清算すれば、名義も返済も自分のものになり、元配偶者との金銭的なつながりを断ち切れます。ペアローンや連帯保証を解消したい場合にも有効な方法です。ただし、越えるべきハードルが2つあります。ひとつは融資です。金融機関は、仲介会社を挟まない個人間売買、とりわけ親族間や元夫婦間の売買には慎重で、宅地建物取引士が作成する重要事項説明書や、きちんとした売買契約書がなければ、審査の土俵に乗らないことがほとんどです。もうひとつは価格です。「元夫婦だから」と時価より大幅に安く売買すると、差額が贈与とみなされ、思わぬ贈与税(みなし贈与)が課されるおそれがあります。地価が上がっている名古屋では、数年前の購入価格の感覚のままでいると、いつの間にか時価と大きくずれていることもあり、適正価格の見極めが欠かせません。
実際にあったご相談をひとつ。名古屋市内にお住まいの40代の女性は、離婚にあたり「小学生の子どもを転校させたくない」と、ご主人とペアローンで購入したマンションに住み続けることを希望されました。話し合いの結果、ご主人の持分を買い取る個人間売買を選択。当事務所で時価を踏まえた価格の考え方を整理し、宅建士として重要事項説明書と売買契約書を作成、金融機関との調整を経てローンの借り換えと持分の移転登記、旧姓への氏名変更登記まで一度に完了しました。「不動産会社に頼むものだと思い込んでいたけれど、費用を抑えて、しかも登記まで一人の専門家に任せられて安心だった」というお言葉をいただきました。司法書士は登記と権利関係の専門家であり、当事務所は宅地建物取引士として契約書・重要事項説明の作成にも対応できます。離婚という人生の節目に、住まいの権利をきちんと守る。そのお手伝いが私たちの仕事です。おひとりで抱え込まず、話し合いの段階からお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q1. 離婚前と離婚後、家の名義を移すならどちらがよいですか?
財産分与を原因とする名義変更は、離婚成立後にしか登記できません。また、離婚「前」に渡すと夫婦間の贈与として贈与税の問題が生じやすく、マイホームの3,000万円特別控除も配偶者間では使えません。一般的には、離婚協議書等で内容を固めたうえで、離婚成立後すみやかに登記するのが基本です。ただし最適な順序はご事情により異なりますので、事前のご相談をおすすめします。
Q2. 住宅ローンが残っていても、元夫から家を買い取れますか?
可能性はありますが、ご自身の収入で新たにローンを組めるか(またはご資金で残債を返せるか)が鍵になります。金融機関は元夫婦間の売買に慎重なため、宅建士による重要事項説明書と売買契約書を整えたうえで、残債の完済・抵当権の抹消・所有権移転・新たな抵当権設定を決済日に同時に行う段取りが必要です。当事務所では書類作成から金融機関との調整、登記まで一貫してお手伝いできます。
Q3. 財産分与で家をもらうと、税金はかかりますか?
受け取る側には原則として贈与税はかからず、清算としての分与であれば不動産取得税も原則かかりません。ただし、名義変更の登記には登録免許税(固定資産税評価額の2%)がかかり、渡す側には譲渡所得税が生じる場合があります。分与の額が多すぎる場合の課税など例外もありますので、具体的な金額はお早めに専門家へご確認ください。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとに、一般的な内容をわかりやすく解説したものです。税務(贈与税・譲渡所得税・不動産取得税など)の具体的な取扱いは個別のご事情により異なります。実行の前に、税理士・司法書士などの専門家に個別にご確認ください。