親が亡くなったあとに遺された実家。あるいは、長年空き家となっていた祖父母の家を相続することになった。そんな経験をされた方は、決して少なくありません。高齢化と人口減少が進む今の日本では、空き家の数が年々増加し、社会問題となっています。総務省のデータによれば、全国の空き家数はこの20年間で大きく増え続けており、いまや住宅の7軒に1軒が空き家という時代です。
空き家を相続された方の中には、「とりあえずそのままにしている」「使い道がないけれど、どうすればよいかわからない」「固定資産税を払い続けているが、売るにも手間がかかりそうで面倒」と感じている方が多くいらっしゃいます。実際、空き家を管理せずに放置してしまうと、建物の老朽化により倒壊や火災のリスクが高まるほか、近隣への悪臭や景観悪化といった問題が起き、ご近所トラブルに発展するケースもあります。また、固定資産税や都市計画税の支払い、草刈りや修繕といった管理の手間・費用も、所有者の大きな負担となります。
こうしたことから、「いっそのこと売ってしまいたい」と考える方が増えているのは自然なことです。しかし、その「売却」をめぐって、実は見過ごされがちな重大な落とし穴があることをご存知でしょうか。
それは、「相続登記をしないまま空き家を売却してしまうこと」の危険性です。登記簿上ではまだ亡くなった親の名義のままなのに、その不動産を自分が所有しているかのように振る舞って売却しようとする──これは、法律の世界では無権利者による処分行為にあたり、契約自体が無効とされる可能性すらあります。中には、「買主が納得しているから大丈夫」「あとから名義変更すれば問題ないだろう」と安易に考えてしまう方もいますが、実はこれは非常にリスクの高い行為なのです。
こうしたケースを、私たち司法書士は日常的に目にしています。そして、そうした売却方法に対して、司法書士であれば絶対に関与しない、という明確な姿勢を持っています。なぜなら、法的に適切な手続きがなされていないまま売買を行うことは、依頼者自身の利益を損なうだけでなく、第三者である買主にも不利益を与える可能性があるからです。
この記事では、相続した空き家を売却するにあたって、なぜまず相続登記が必要なのか、法律的な背景とともに、司法書士の立場からわかりやすくご説明いたします。また、今後増加するであろう空き家の相続・処分において、どのような手順で進めていけばよいのか、トラブルを回避しながら安心して進められる方法についても詳しく解説します。
相続と不動産の問題は、人生のなかでもそう何度も経験するものではありません。しかし、だからこそ最初の一歩を誤ってしまうと、あとで大きなトラブルになってしまうことがあります。相続した空き家を「売る前」に、ぜひ知っておいていただきたい大切な知識を、この記事を通じてお伝えいたします。