不動産の個人間売買Q&A
~司法書士がわかりやすく解説します~
ごとう司法書士事務所
Check!
興味がある方はお気軽にご相談を
よくある質問からQ&Aを3つご紹介します!!
Point
1

Q1. 不動産を個人間で売買することは法律上問題ないの?

A. はい、法律上問題ありません。ただし、個人間売買には専門知識が求められ、慎重な対応が必要です。

不動産の売買をする場合、多くの方がまず思い浮かべるのは「不動産会社を仲介に入れる」方法です。これは、売り手と買い手の間にプロの不動産業者(宅地建物取引業者)が入り、物件の調査、価格交渉、契約書の作成、引渡し、登記の段取りなどをまとめて行ってくれる方法で、特に初めて不動産を扱う方にとっては安心感のある取引スタイルです。

一方で、親族間や知人同士で不動産の売買を行う場合、「身内だし、信頼できる人同士だから、不動産会社を通さずに直接契約すればいいのでは?」と考えることもあるかと思います。たしかに、不動産を個人間で直接売買することは法律上まったく問題ありません。民法では、当事者の合意によって売買契約が成立するという原則がありますので、不動産のような高額な財産であっても、当事者が合意し、適切な手続きを踏めば、第三者を介さずに取引することは可能です。

しかし、法律上可能であるということと、安全・確実に取引できるかは別問題です。実際には、個人間で不動産を売買しようとしたときに、以下のような問題に直面するケースが非常に多く見られます。

不動産の権利関係(抵当権が残っている、共有名義になっているなど)が複雑で処理に迷う

境界が不明確で、どこまでが自分の土地かわからない

建物に未登記部分がある

名義人が高齢で意思能力に疑義がある

契約書の内容に法律的な不備がある

贈与とみなされてしまい、思わぬ税金が発生する

登記手続きを忘れたり、誤って手続きしてしまったりする

これらのリスクは、たとえ信頼できる相手との取引であっても発生します。むしろ、信頼関係があるがゆえに「きちんと契約書を作っていない」「口約束で済ませてしまった」といった安易な進め方がトラブルの原因になりやすいのです。

また、不動産会社が関与する取引であれば、宅建業法に基づき、契約前に重要事項の説明(いわゆる「重説」)が行われるのが通常ですが、個人間売買ではそのような義務もなく、情報の非対称性(知識の差)によって片方が不利になることもあります。

さらに、個人間売買では、契約書の作成や登記申請といった手続きを自分たちで進める必要があります。インターネットで調べた情報や、市販の契約書のひな形などを使って独自に進める方もいますが、その情報が最新で正確とは限らないため、不完全な契約や誤った登記申請となることも少なくありません。

したがって、不動産を個人間で売買する場合には、法的知識を持った専門家(とくに司法書士)のサポートを受けることが、安全で確実な取引のために非常に重要になります。司法書士は、不動産の登記の専門家であるとともに、契約書の内容や法律的なリスクについても相談に乗ることができる国家資格者です。個々の取引に応じたオーダーメイドの対応が可能なため、「うちは特別な事情があるから…」という場合でも、柔軟に適切な助言を受けることができます。

結論として、不動産の個人間売買は法律上まったく問題ありませんが、その自由さの裏側には「すべて自己責任で進めなければならない」という重大な責務が伴うことを忘れてはいけません。不動産という大切な資産を安全に、そして将来にわたって安心できるかたちで取引するためには、専門家の力をうまく活用することが、もっとも賢明な方法だといえるでしょう。

Point
2

Q2. 個人間売買では不動産会社を使わないから手数料はかからないの?

A. 不動産会社への仲介手数料は発生しませんが、その他の必要な費用や専門家への報酬は別途かかる可能性があります。取引の内容によっては、かえって専門家の関与が重要になるケースもあります。

不動産会社を利用して売買を行うと、「仲介手数料」がかかります。これは宅建業法に基づいて設定されており、たとえば売買価格が400万円を超える場合、一般的には「(売買価格×3%)+6万円+消費税」が上限とされています。仮に2,000万円の物件を売買する場合、仲介手数料は約72万円(税込)にもなります。これは決して小さな金額ではありません。

このような事情から、「仲介手数料を節約したい」と考える方が、個人間売買を検討されることは自然な流れです。たしかに、**不動産会社を間に入れなければ、仲介手数料そのものはかかりません。**その点では、個人間売買には経済的なメリットがあるとも言えるでしょう。

しかし実際には、仲介手数料がかからない代わりに、自分たちで担わなければならない作業や手続きが非常に多く、それに伴って別の費用や報酬が発生することがあります。

たとえば、以下のような業務は、不動産会社が介在しない個人間売買であっても、正確かつ法的に問題のない形で進めるためには必要不可欠なものです。

● 契約書の作成

不動産売買契約書は、単なる「売ります・買います」という書面ではありません。不動産の特性上、契約不適合責任の取り決め、引渡し条件、境界や公租公課(税金)の精算、解除条項、違約金など、詳細にわたって定める必要があります。テンプレートを使うだけでは対応できないことも多いため、司法書士や弁護士に作成・チェックを依頼するのが安心です。報酬額は内容や対応範囲によりますが、一般的に5万円〜10万円前後が目安となります。

登記手続き(所有権移転登記など)

売買に伴い、名義変更のための「所有権移転登記」が必要です。この登記は、専門的な書類の作成や添付資料が求められ、一般の方が自力で行うには相当の知識と労力が必要です。多くの場合、**司法書士に依頼して確実に進めることが推奨されます。**司法書士報酬としては、5万円〜10万円程度が相場ですが、物件の所在地や内容によって異なります。

● 税務対応(譲渡所得税、贈与税など)

個人間で売買する場合、「適正な価格」での取引が重要です。市場価格から著しく外れた金額(たとえば親子間で1万円で売買など)で契約すると、**税務署から「贈与」とみなされ、贈与税の対象となることがあります。**また、不動産を売却した側には、譲渡所得税がかかる可能性もあるため、適切な税務処理が求められます。税理士に相談することで、将来的なリスクを軽減することができます。

● 公正証書の作成や立会いが必要なケースも

契約の内容によっては、「支払いが分割になる」「条件付きでの引渡しを行う」といった複雑なケースもあります。そのようなときは、公証役場での公正証書作成や、司法書士による立会いが必要となることもあります。これも費用が発生する部分ですが、トラブル防止には有効な手段です。

■ 手数料は減っても「手続きの複雑さ」は変わらない

個人間売買は、確かに仲介手数料を抑えることができます。しかしその分、売主・買主双方の責任や負担が増えるという現実があります。「お金を節約したい」と思っていたのに、あとで契約トラブルや税務リスクが発生し、結局想定外の費用がかかってしまったという例も少なくありません。

そのような失敗を避けるためには、最初から司法書士などの専門家に相談し、必要なサポートを受けながら、安心・安全な取引を行うことが大切です。当事務所では、**明瞭な料金設定で、必要な部分だけご依頼いただける「個別対応」**を行っておりますので、無駄な費用をかけることなく、必要なサポートを受けることができます。

このように、「仲介手数料がかからない=無料で済む」とは限らないのが、個人間売買の現実です。大切な資産の売買だからこそ、費用だけでなく「安心と安全」も重視して取引を進めることが、結果的に最も合理的な選択だと言えるでしょう。

Point
3

Q3. 売買契約書はどんな内容にすればいいの?

A. 不動産売買契約書には、取引する物件の詳細、代金や支払方法、引渡しの時期、特約事項など、明確かつ具体的な内容を正確に記載する必要があります。不備のある契約書は後々のトラブルの原因になりますので、専門家による確認・作成がおすすめです。

不動産の売買は、一般的な商品の売買とは異なり、取引金額が大きく、また権利関係や物理的な状況が複雑であることが多いため、契約書の内容には法的・実務的な正確さと網羅性が求められます。特に個人間売買の場合、不動産会社のチェックが入らない分、「契約書さえあれば大丈夫だろう」と安易に考えてしまうこともありますが、実際には適切に作成された契約書があるかどうかで、将来的な安心感が大きく変わってきます。

以下では、売買契約書に最低限必要な項目と、そのポイントについて、ひとつずつ詳しくご説明します。

1. 不動産の表示(登記事項の正確な記載)

契約書には、売買の対象となる不動産を登記簿謄本(登記事項証明書)どおりに記載する必要があります。「東京都〇〇市〇〇町1丁目1番地の土地」のような住所だけでは不十分で、地番や家屋番号、種類(宅地、居宅など)、構造、床面積なども正確に書きます。

よくあるトラブルのひとつに、「実際に存在しない土地や建物を契約してしまった」「一部未登記の建物があった」というケースがあります。こうした事態を避けるためにも、法務局で最新の登記情報を確認したうえで記載することが大切です。

2. 売買代金、支払方法、支払時期の明記

不動産売買は高額な取引になるため、代金に関する条件を非常に明確に定める必要があります。

総額はいくらか

手付金があるか、いくらか、いつ支払うか

残金の支払い方法(振込・現金など)と支払日

これらを明記しないと、後日「聞いていない」「そんな約束していない」といったトラブルにつながります。

また、支払いの遅延や不履行があった場合のペナルティ(違約金や契約解除の条件)も定めておくことで、万が一の場合の対応がスムーズになります。

3. 引渡しの時期と条件、登記申請のタイミング

不動産の「引渡し」とは、物理的な引き渡し(鍵の受け渡しなど)と、**法的な権利の移転(登記)**の両方を含みます。

「残代金を支払った当日に引き渡す」「残代金支払いから1週間以内に引き渡す」など、明確な日付や条件を定める必要があります。また、買主が住宅ローンを利用する場合などは、融資実行日の関係で引渡し日がずれることもありますので、その旨も特約として記載しておくと安心です。

さらに、登記申請のタイミングや費用負担の分担(誰が登記費用を負担するか)についても明記しておくべきです。

4. 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に関する取り決め

民法改正により、「契約不適合責任」という新しいルールが導入されました。これは、売主が「引き渡した不動産が契約の内容に適合していない場合」に、一定期間、責任を負うというものです。

たとえば、「雨漏りがある」「シロアリの被害がある」「設備が壊れていた」などがこれに該当します。特に個人間売買では、売主が業者ではないため、「現状有姿(そのままの状態で引渡す)」とすることが多いですが、その場合でも、一定の責任免除の特約を明確にしておく必要があります。

書き方を間違えると、売主が想定以上の責任を負うことになる可能性があるため、法律の専門家によるチェックが重要です。

5. 公租公課(固定資産税など)の精算方法

不動産には毎年固定資産税や都市計画税といった税金がかかります。これらは、その年の1月1日時点の所有者に課税されますが、売買が途中の時期に行われた場合、売主と買主でその負担をどう分担するかを決めておく必要があります。

たとえば、「引渡し日を基準として日割りで精算する」といった方法が一般的です。金額の取り決めはもちろんですが、精算方法や支払方法も記載しておくと安心です。

6. その他の特約事項

取引の内容によっては、以下のような特別な条件や事情に応じた取り決めも必要になります。

境界未確定地についての測量義務

既存の賃貸借契約の承継について

解体条件付き売買

古屋付き土地の取扱い(建物滅失登記の義務など)

引越し期限、居住中引渡しの対応

買主の住宅ローン特約(ローンが通らなかった場合の解除条件)

これらの内容は、契約書の中でも最もカスタマイズが必要な部分であり、個別の事情に応じた法的配慮が求められるため、やはり司法書士などの専門家による助言や作成支援が重要になります。

契約書がすべての基本。将来のトラブル防止のために、今できる備えを。

個人間売買において、契約書の内容は「口約束を証明するもの」ではなく、「法的に責任の範囲を明確にするもの」として機能します。不明確な契約書や、ネット上のひな形だけで作成した契約書では、いざというときに法的効力が弱く、トラブル時に十分な保護が受けられないおそれがあります。

特に高齢の親から子への売買、相続対策の一環としての取引、知人間での柔軟な取決めなど、**画一的な契約書では対応できないケースが増えています。**そうした場合にこそ、司法書士のような法律と不動産に精通した専門家の出番です。

契約書は、「取引がうまくいくための土台」であると同時に、「もしものときに自分を守る盾」でもあります。個人間売買においては、特に契約書の精度が取引の成功・失敗を大きく左右することを、ぜひ覚えておいてください。

お気軽にお電話でご連絡ください
052-228-0939 052-228-0939
9:00~19:00
Access

気兼ねなく足をお運びいただける相談スペースを名古屋にご用意しています

概要

事務所名 ごとう司法書士事務所
住所 愛知県名古屋市中区丸の内3-15-3
TCF丸の内ビル6F
電話番号 0120-290-939
営業時間 9:00~19:00
定休日 土曜日 日曜日 祝日
最寄り 久屋大通駅より徒歩6分
監修 不動産売買仲介についてはごとう不動産事務所監修

アクセス

相談者様にとって「いつでも気軽にサポートが受けられる身近な司法書士」となれるよう、地域に密着した細やかな対応を心掛けています。相続や登記、そしてその他の申請手続きでお困りなら、一度相談してみませんか。
Contact

お問い合わせ

RELATED

関連記事