借りている家を買い取るときに知っておきたいこと|名古屋の司法書士が解説する手続き・税金・トラブル回避策
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名古屋エリアでは、オーナーの高齢化と相続、価格の二極化を背景に、賃借人への売却話が今後さらに増えていくと見込まれます。だからこそ、ご自身の状況を客観的に整理し、登記・契約・税務の専門家を交えて丁寧に進めていかれることが、長く安心して暮らすための最善の道となります。
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1.「住みながら買い取る」が選ばれる時代背景 ― 名古屋の賃貸市場で何が起きているか

大家さんからの「買いませんか」が増えている本当の理由

近年、名古屋市内で「大家さんから物件を買わないかと声をかけられた」というご相談が増えている背景には、明確な構造的要因があります。

ひとつは、賃貸物件オーナーの高齢化と相続発生です。総務省の住宅・土地統計や愛知県の人口動態を踏まえると、戦後から昭和期に建てられた賃貸戸建てや木造アパートの多くは、現在のオーナーが70代から80代に差しかかっています。ご本人が体力的に管理が難しくなったり、相続を意識して資産整理を始められたタイミングで、入居者に売却の話が持ち掛けられるケースが目立ちます。

もうひとつは、名古屋の不動産価格の二極化です。執筆時点で確認できる範囲では、名古屋市中区・東区・中村区(名駅エリア)・千種区の都心部マンションは堅調に推移している一方で、北区・港区・南区・守山区の周辺部の戸建てや築古アパートは流動性が下がり、相場での売却が難しい物件も少なくありません。こうした物件は、空室リスクや解体費用を考えると、現在の入居者に売れるなら大家側にとっても合理的な選択になるのです(個別の市場動向は時期と地域により変動しますので、最新の取引事例を必ずご確認ください)。

つまり、「あなたに買ってほしい」と声がかかるとき、その裏には大家さん側の事情がはっきりと存在しています。これは決して悪いことではありませんが、こちらが置かれている立場を冷静に理解することが、価格交渉の出発点となります。

「住んでいる人だからこそ」の落とし穴

賃借人による買取には、確かに大きな利点があります。物件の日当たり、湿気、近隣の音、夏場の暑さ、冬場の冷え――これらは実際に住んだ人にしかわからない情報で、購入後の「こんなはずではなかった」というギャップが少ないのです。

しかしながら、住んでいる方ほど見落としやすい点もございます。当事務所が関わった事例(特定を避けるため複数事案を組み合わせ修正しております)では、次のようなことがありました。

名古屋市瑞穂区の戸建てを10年お借りしていたご家族が、大家から相場よりやや高めの価格を提示された。「住み慣れた家だから」と即決されようとしたが、当事務所で近隣の成約事例を確認したところ、約300万円の価格差があった。

中川区の築40年の木造住宅を購入された後、床下の白蟻被害と給排水管の老朽化が判明。賃貸時は大家負担で部分修繕されていたため、ご本人は劣化に気付かなかった。

名東区のマンションを買い取った直後、管理組合からの大規模修繕一時金の請求が判明。賃貸時には大家が負担していた費用が、所有者となった瞬間にご自身に降りかかってきた。

「住んでいるから安心」という感覚は、実は売主側にとっても有利に働く心理です。客観的な価格・状態・将来コストの確認は、第三者の専門家を交えて行うことを強くお勧めいたします。

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2.賃貸借契約から売買契約への「切り替え」で起こりやすいトラブル

敷金・賃料・原状回復は、どこへ消えるのか

賃借人が物件を買い取る場合、もっとも論点になりやすいのが「既存の賃貸借契約の終了処理」です。これは見落としやすい論点ですが、後日のトラブルにつながりやすい部分です。

第一に、敷金の取扱いです。賃貸借契約は所有権移転と同時に終了するのが通常ですが、敷金については売買代金から精算するのか、別途返還を受けるのかを契約書で明確にしておく必要があります。「売買代金に含めて相殺」する形にする場合は、その旨を契約条項に明記しないと、後日「返してもらっていない」「いや差し引いた」というやり取りになりかねません。

第二に、賃料の日割り精算です。引渡し日の前日までは賃料、引渡し日以降は所有者として固定資産税相当額を負担する、という線引きを誰がいつまでに行うのか、書面で確定させておくことが大切です。

第三に、原状回復義務です。本来、賃貸借契約が終了する際には原状回復が問題になりますが、自分が買い取って住み続ける場合には実際の復旧作業は不要となります。とはいえ、契約上の原状回復義務が「免除されたこと」を明文化しておかないと、後日大家側の相続人が登場した場合などに「契約上は復旧義務があったはず」と蒸し返されるおそれがあります。

「現状有姿」の一言が、想定外の出費を生む

賃借人による買取で多く採用されるのが「現状有姿(げんじょうゆうし)売買」という形式です。これは「いま見えている状態のまま引き渡す」という意味で、売主側が後日の不具合修繕責任を負わない、または極めて限定的にしか負わないという内容になります。

「もう何年も住んでいるから状態は把握している」と思って現状有姿を受け入れる方が多いのですが、ここに大きな落とし穴があります。賃貸期間中、設備の不具合は大家が修繕してくださっていたため、入居者は「壊れたら直してもらえる」前提で生活していたはずです。ところが、所有者になった瞬間から、給湯器、エアコン、給排水管、屋根、外壁、シロアリ対策、すべてご自身の負担に切り替わります。

執筆時点の民法では、売買において売主が一定範囲で「契約不適合責任」を負うのが原則ですが、現状有姿売買では特約でこの責任を免除または制限することが一般的です(具体的な範囲は契約条項により異なりますので、必ず個別にご確認ください)。当事務所では、契約前に建物状況調査(インスペクション)を提案させていただくか、少なくとも給排水管・屋根・主要設備の年式と更新履歴を書面で大家から取り寄せるようお勧めしています。

重要事項説明と税務の盲点

賃借人が買取をする場合でも、売主側が宅建業者であれば重要事項説明が必要となります。一方、大家さんが個人の場合は、法的な重要事項説明義務が発生しないケースもありますが、当事務所では「個人売買だからこそ、書面で重要事項を整理する」ことを強くお勧めしています。境界、私道、越境物、用途地域、市街化区域・調整区域の別、ハザードマップ上の位置――これらは住んでいるだけでは見えない情報で、後の売却や相続にも影響します。

また、税務面では次のような論点があります(具体的な税額は個別事情で異なるため、税理士へのご確認をお願いいたします)。

相場より著しく低い価格での買取の場合、差額が買主への「みなし贈与」と評価される可能性があります。

一定の要件を満たす中古住宅の取得では、登録免許税の軽減や不動産取得税の軽減措置の対象となる場合があります。

住宅ローン控除の適用には、築年数、耐震基準適合証明書、床面積など複数の要件があり、賃貸物件をそのまま買い取る場合にも漏れなく確認が必要です。

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3.司法書士が支える「住みながら買う」の安全な進め方

登記簿が教えてくれる、大家さん側の「本当の事情」

賃借人による買取で、私ども司法書士が最初に確認するのは登記簿(登記事項証明書)です。所有者の表示、抵当権・根抵当権の有無、差押え、仮登記、信託登記の有無――これらをひとつずつ確認していきます。

ここで意外に多いのが、「大家さん名義のまま、すでに相続が発生している」というケースです。名古屋市北区で扱った事例では、入居者の方が買い取る話が進んだ段階で、当事務所が登記を確認したところ、大家さんの登記が15年前に亡くなったご先代のままであることが判明しました。このような場合、まずは相続登記を完了させてから売買に進む必要があり、そのための戸籍収集や遺産分割協議の取りまとめも司法書士の業務範囲です。なお、令和6年(2024年)4月から相続登記が義務化されており、こうした「未登記の相続」が早期に整理されるよう国としても促している状況です。

抵当権が設定されている場合は、売買代金で抹消する段取りを、買主側の住宅ローン実行とタイミングを合わせて組み立てる必要があります。これは「決済」と呼ばれる場面で、買主の住宅ローン融資実行、売主への代金支払い、抵当権抹消、所有権移転登記をすべて同じ日に同時並行で進めるため、司法書士の段取り力が問われる工程です。

価格の妥当性は「複数の物差し」で確認する

賃借人による買取では、相場感覚を得にくいことが大きな問題となります。当事務所では、宅地建物取引士の立場から、次のような複数の物差しで価格をご確認いただいています。

ひとつ目は、近隣の成約事例です。レインズ(指定流通機構)の成約データや、国土交通省の「不動産価格情報」、民間ポータルサイトの過去成約事例などを組み合わせます。

ふたつ目は、固定資産税評価額や路線価との関係です。これらは取引価格と完全には一致しませんが、目安として比較する価値があります。

みっつ目は、もし第三者に売り出した場合の流動性です。築年数・立地・面積から、市場で実際に動く価格帯を推定します。

これらを総合して、「提示された価格は、相場との比較でどう評価できるか」「みなし贈与のリスクはないか」を、お客様にわかりやすくご説明いたします。

大家さんとの関係を壊さずに、しっかり守るために

賃借人と大家さんの関係は、年単位で続いてきた信頼関係です。買取交渉の場面で、こちらが急に「専門家を入れる」と切り出すと、相手を疑っているように受け取られるのではないか――そうご心配される方は多くいらっしゃいます。

私どもがいつもお伝えしているのは、「司法書士は、売主・買主のどちらかの味方になる立場ではなく、取引の安全と登記の正確性を確保する中立的な専門家として関与する」ということです。むしろ、第三者である司法書士が間に入ることで、大家さん側にも「言った言わない」の心配が残らず、お互いが安心して取引を終えられます。

実際、賃借人買取で当事務所が関与した取引では、その後も大家さん(または旧大家さんのご家族)と良好な関係を続けていらっしゃるお客様が多くいらっしゃいます。書面と手続きを丁寧に整えることは、結果として「気持ちの良い終わり方」を実現する手段でもあるのです。

特に、女性のお客様やご高齢のお客様にとっては、ご自身の権利と将来の安心を守るための「ひと手間」が、ご家族全体の安心につながります。当事務所では、お一人おひとりのご事情を丁寧に伺い、オーダーメイドで最適な進め方をご提案しております。

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概要

事務所名 ごとう司法書士事務所
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最寄り 久屋大通駅より徒歩6分
監修 不動産売買仲介についてはごとう不動産事務所監修

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