実例で見る、相続登記から売却・節税までの流れ
ここで、実際にあったご相談に近い例(個人が特定されないよう内容を変えています)をご紹介します。
名古屋市港区にお住まいだった、ブラジル国籍のお父さまが亡くなりました。相続人は、すでに日本国籍に帰化された50代の長女のNさんと、ブラジルで暮らす弟さんのお二人。お父さまの名義の古い一戸建て(昭和50年代の建築)が残されていました。Nさんは「弟は遠方で連絡も取りづらく、家は誰も住んでいない。でも何から手をつければいいのか分からない」と、とても不安そうに来所されました。
私どもはまず、お父さまが名古屋に長く住んでいた事実を確認し、日本の民法にしたがって相続を進められると整理しました。次に、ブラジルにいる弟さんとは、現地の在外公館で取得できるサイン証明などを使って遺産分割協議をまとめ、相続登記を申請。名義をNさんに整えたうえで、宅地建物取引士として売却の段取りまで一貫してお手伝いしました。古い家屋は解体して土地として売り出し、立地のよさもあって買い手が見つかりました。
このとき大きな支えになったのが、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」です。これは、亡くなった方がひとりで住んでいた古い家(昭和56年5月31日以前に建てられたものなど)を相続した人が、一定の条件を満たして売却したとき、売却益から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を差し引ける制度です。売却の期限は、相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。この特例は2027年(令和9年)12月31日までの売却に適用されると延長されています。条件にあてはまれば、税負担を大きく減らせる心強い味方です。
ただし、この控除には家屋の耐震基準や解体の有無など細かな要件があり、適用できるかどうかはケースごとに判断が必要です。税金の最終的な計算や申告は税理士の領域になりますので、私どもは正確を期すため、提携する税理士と連携しながらご案内しています。情報は本記事作成時点(2026年6月)のものであり、税制は改正されることがあります。実際に売却を検討される際は、必ず最新の内容をご確認ください。
このように、ブラジル国籍が関わる相続では、「準拠法の見極め」「相続登記」「不動産の売却」「税の特例」が一本の線でつながっています。それぞれ別々の専門家に頼むと、書類のやり直しや余計な手間が生じがちです。登記の専門家である司法書士であり、不動産取引の専門家である宅地建物取引士でもある——その両方を一人が担うからこそ、最初から最後まで筋の通ったご提案ができるのだと考えています。