名古屋で韓国籍の方の相続不動産を売却する|登記・税金の期限・海外の相続人まで司法書士兼宅地建物取引士が解説
ごとう司法書士事務所
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韓国籍の方の相続不動産売却は、登記・税金の期限・海外の相続人が鍵です。
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1.売却のスタートラインは「相続登記」――韓国籍のご家族は、ここに時間がかかります

―― 亡くなった方の名義のままでは、家は売れません

まず、いちばんの土台からお話しします。不動産は、亡くなった方の名義のままでは売却できません。買主さんに所有権を移すには、その前に「亡くなった方 → 相続人」への名義変更、つまり相続登記を済ませておく必要があります。売却を考え始めたら、実は最初にやるべきことは、不動産会社への査定依頼よりも「登記の準備」なのです。

そして、韓国籍のご家族の相続登記には、日本人の場合とは違う準備が要ります。亡くなった方が韓国籍のままですと、日本の戸籍が存在しないため、韓国側の「除籍謄本」や「家族関係登録」の各証明書を取り寄せ、日本語の翻訳文を付けて相続人を確定していくことになります。書類の取り寄せ先が韓国側になるぶん、日本人の相続よりも一か月、二か月と余計に時間がかかるのがふつうです。また、適用される相続のルール(法定相続分など)も、原則として亡くなった方の本国法である韓国民法によりますので、遺産分割協議の中身にも目配りが必要です。このあたりの書類の集め方や分け方の考え方は、当事務所の別のコラムで詳しくご紹介していますので、ここでは「売却したいなら、書類集めから逆算して早めに動く」という一点だけ、覚えておいてください。

期限の話も避けて通れません。2024年4月から相続登記は義務化されており、不動産を相続したことを知った日から原則3年以内に登記をしないと、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料の対象になり得ます。「売るかどうか決めてから登記を考えよう」と先送りしているうちに、この期限が近づいてしまうご家庭が実際にあります。売る・売らないの結論が出ていなくても、登記の準備は先に始めておく――これが、韓国籍がからむ相続では特に大切な心構えです。

もうひとつ、見落とされがちな点があります。売却の決済では、登記簿上の所有者の住所・氏名が印鑑証明書などと一致している必要があり、通称名(日本名)と韓国名の表記、住所の変遷などが登記簿と現在の書類とでずれていると、その修正登記が追加で必要になることがあります。韓国籍の方の登記には、こうした細かな「つまずきの種」が点在していますので、売却のご予定が見えてきた段階で、一度登記簿の中身を専門家に確認してもらうことをおすすめします。

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2.税金には「期限」がある――3年10か月と、2027年12月末という二つの数字

―― 「取得費加算」と「空き家の3,000万円控除」、どちらが使えるかで手取りが大きく変わります

次に、売却にかかる税金のお話です。相続した不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税と住民税がかかります。税率は、亡くなった方が買った日から数えて所有期間が5年を超えていれば約20%(20.315%)、5年以下なら約39%(39.63%)です。ここでひとつ安心していただきたいのは、所有期間も購入代金(取得費)も、亡くなった方のものをそのまま引き継げるという点です。親御さまが何十年も住んだ家なら、まず長期の約20%のほうで考えて大丈夫です。

ただし、在日韓国人のご家庭でよくお見かけするのが、「父が戦後に買った土地で、いくらで買ったのか分かる書類が何も残っていない」というケースです。取得費が分からないと、税金の計算上は「売った値段の5%」しか取得費と認められず(概算取得費)、売却額の大半が利益扱いになって税金が重くなってしまいます。古い売買契約書や領収書、出納帳のたぐいは、処分せずに探してみてください。書類が見つからない場合でも、当時の状況から取得費を合理的に説明できる場合もありますので、あきらめる前にご相談いただきたいところです。

そのうえで、覚えておいていただきたい「二つの数字」があります。

ひとつめは「3年10か月」。相続税を納めた方が、相続開始の翌日から3年10か月以内にその不動産を売却すると、納めた相続税の一部を取得費に上乗せして、譲渡所得税を軽くできる特例があります(取得費加算の特例)。相続税がかかったご家庭にとっては、「いつ売るか」で税額が変わる、ということです。

ふたつめは「2027年12月末」。亡くなった方がお一人で住んでいた昭和56年5月31日以前建築の古い家(マンションなどの区分所有建物は対象外です)を、相続した方が一定の要件のもとで売却すると、利益から最大3,000万円を差し引ける「空き家の3,000万円特別控除」という特例があります。この特例の適用期限が、現在のところ2027年12月31日までとされています。加えて、売却自体も「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に行う必要があり、相続の時から売却まで貸したり住んだりしていないこと、売却代金が1億円以下であることなど、細かな要件がいくつもあります。2024年からは、売却後に買主さんの側で翌年2月15日までに取壊しや耐震改修を行う場合でも適用できるようになった一方、相続人が3人以上いる場合は一人あたりの控除上限が2,000万円に下がるなど、改正で中身も動いています。名古屋の下町エリアには昭和50年代以前の家がまだ多く残っていますから、この特例に当てはまるご家庭は、実は少なくないはずです。

なお、この二つの特例は同じ不動産について両方いっぺんには使えず、どちらかを選ぶことになります。どちらが有利かは、相続税の額、家の築年数、売却額などによって変わりますので、まさに「わが家の場合」を個別に計算してみる必要があります。税額の具体的な計算や申告は税理士さんの領分ですが、当事務所では、売却の段取り全体を組み立てる立場から、特例の期限に間に合うスケジュールづくりと、必要に応じた税理士との連携までを一体でお手伝いしています。

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3.韓国や海外に相続人がいる売却と、いまの名古屋で「いつ・いくらで」売るか

―― 買主が税金を天引きする「源泉徴収」の仕組みと、上昇が鈍り始めた名古屋の相場

三つめの関門は、相続人のお住まいです。韓国籍のご家庭では、相続人のどなたかが韓国にお住まいだったり、お仕事やご結婚で海外に渡っておられたりすることが、めずらしくありません。実は、日本に住んでいない方(税法上の「非居住者」)が日本の不動産を売却するときには、特別なルールがあります。

それが「源泉徴収」の仕組みです。非居住者の方が売主になる場合、買主は原則として、売買代金の10.21%をあらかじめ差し引いて税務署に納め、売主には残りの89.79%だけを支払うことになっています(売却代金が1億円以下で、買主が自分や親族の住まいとして買う場合は、この天引きは不要です)。天引きされた税金は、後日、日本での確定申告によって精算され、納めすぎていれば戻ってきます。ただし、海外にお住まいの方が日本で申告をするには「納税管理人」という日本国内の窓口役を選んでおく必要があり、ここを知らないままですと、決済の場面で「話が違う」と慌てることになりかねません。また、遺産分割協議書への署名も、海外在住の相続人の方は実印・印鑑証明書の代わりに現地の在外公館などで「サイン証明」を取っていただく必要があり、これにも時間がかかります。海外がらみの売却は、決済日から逆算して、通常より数か月余裕を持った段取りが肝心です。

では、その名古屋の不動産は、いま「いつ・いくらで」売るのがよいのでしょうか。2026年の公示地価を見ると、名古屋市の住宅地は平均でプラス3%前後と上昇が続いているものの、上昇の勢いは前の年より鈍り始めました。名駅や栄といった都心部の商業地・マンション用地には依然として強い需要がある一方で、市内でも場所によって値動きの差がはっきりしてきています。「金利のある世界」に戻った住宅ローンの影響もあって、売り出し価格と、買い手が実際に手を伸ばせる価格との間に開きが生じやすくなっている、というのが実感です。

少し長い目で見れば、日本全体では若い世代の人口が減り、これから団塊の世代の相続が本格化して、住む人のいない家が市場に増えていきます。世界的なインフレと建築資材の高騰で新築の値段は上がり、投資家が買う物件の価格と、実際に住む方が買える価格とが、別々に動く傾向も強まっています。名古屋の都心部は全国的に見れば底堅い部類ですが、郊外や築年数の古い物件では、「持ち続けるほど高く売れる」という時代の前提は、もう当てにできません。堅実な名古屋の方ほど「もう少し様子を見てから」とおっしゃるのですが、税金の特例の期限と、相場の潮目とを両にらみで考えると、「売ると決めたら、期限から逆算して淡々と進める」ほうが、結果として手取りを守れることが多いのです。

―― ここで、よくあるご相談を一つ、人物が分からない形にしてご紹介します。名古屋市内にお住まいの50代の男性から、「韓国籍のまま亡くなった母の、昭和50年代に建てた実家を売りたい。ただ、弟がソウルに住んでいる」というご相談を受けたことがあります。まず韓国から除籍謄本と家族関係の各証明書を取り寄せて相続人を確定し、遺産分割協議書はソウルの弟さんに国際郵便でお送りして、韓国の印鑑証明書を添えて返送していただきました。相続登記を済ませたうえで、宅地建物取引士として売却活動もお手伝いし、空き家の3,000万円特別控除の要件に収まるよう、更地渡しの条件や引渡し時期を買主さんと調整。弟さんの持分については納税管理人の届出と源泉徴収の精算まで見通しを立ててお引き渡しできました。「登記と売却と税金の話を、あちこち別々に相談しなくて済んだのが何より助かった」と言っていただけたのが、印象に残っています。

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