【名古屋】外国人の不動産規制と相続|ブラジル国籍でも相続登記・売却はできる?司法書士兼宅建士が2026年最新動向を解説
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1.いまのルールはどうなっているのか――外国籍でも名古屋の家は相続できるし、名義もあなたのものにできる

まず、現在の日本のルールを確認しておきましょう。

日本には、外国人の不動産取得を直接制限する法律はありません。国籍を問わず、土地も建物も自由に買うことができ、売ることもでき、そして相続することもできます。これは1994年に日本が世界貿易機関(WTO)のサービス貿易のルール(GATS)に加わった際、土地取引について特別な留保を付けなかったことが背景にあり、主要国の中でも開かれた制度といわれてきました。相続の場面でも同じです。相続人の国籍は一切問われません。ブラジル国籍の方が、名古屋の実家の土地建物を相続して、ご自身の名義で相続登記をすることは、当然にできます。

「でも、規制の議論が進んでいると聞いたけれど」――そのとおりです。政府は2026年1月23日に「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を公表し、安全保障や国土管理の観点から、外国人による土地取得について新たな枠組みの検討を始めました。報道によれば、規制の骨格は2026年中にまとめる方針とされ、与党内には外国人政策を検討する組織も設けられています。一方で、都心部で話題になったマンション購入規制については、政府・与党は踏み込んだ規制を見送り、まずは実態の把握を優先する姿勢が伝えられています(2026年6月時点の報道)。つまり現在は、「調べて、それから考える」段階であり、外国籍の方の相続を妨げるような制度は、議論の俎上にも具体的には上がっていないのです。今後の議論の行方は流動的ですので、この点は最新の報道にご注意いただきたいのですが、少なくとも「相続できなくなるのでは」というご心配は、現時点では無用といってよいでしょう。

なお、すでにある制度として、重要土地等調査規制法には触れておきます。自衛隊の基地や原子力発電所の周辺など、安全保障上重要な区域では、国が土地の利用状況を調査でき、とくに重要な「特別注視区域」では一定面積以上の売買に事前の届出が必要です。ただしこの事前届出の対象は売買などの契約であり、相続による取得は事前届出の対象ではありません。名古屋市内にも自衛隊の駐屯地周辺など指定区域がありますが、日常の住まいの相続で心配される場面はほとんどないと考えていただいて結構です。

それよりも、名古屋のご家庭にとってずっと身近で、期限が迫っているのが相続登記の義務化です。2024年4月から、不動産を相続したことを知った日から3年以内の登記が義務になり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になりえます。しかも、この義務は昔の相続にもさかのぼって適用され、過去に相続した分の登記の期限は2027年3月31日。もう1年を切る足音が聞こえてきました。ブラジル国籍の方が関わる相続は、戸籍の代わりに出生・婚姻・死亡の証明書(セルチドン)を集め、翻訳を添える分だけ時間がかかります。規制のニュースを気にするより先に、まず登記を済ませておく――これが、いまいちばん確かな備えです。

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2.2026年4月から変わったこと――「ブラジル在住の相続人」がいるご家庭は新しい報告義務にご注意を

さて、ここからが本記事のいちばんお伝えしたいところです。規制はまだ検討段階、と申し上げましたが、実はすでに始まった新しいルールが一つあります。外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく、不動産取得の報告制度の強化です。

もともと外為法には、日本に住んでいない「非居住者」が日本の不動産を取得したとき、財務大臣に報告する仕組みがありました。ただ、これまでは自分や親族が住むための取得などは報告が要らないとされていたため、実際に報告が必要になる場面は限られていました。それが省令の改正により、2026年4月1日からは、取得の目的を問わず、非居住者が日本の不動産を取得したら原則として報告が必要になったのです。外国人による取得の実態を国が把握するための改正で、先ほどの「総合的対応策」の流れをくむものです。

ここで大切なのは、対象が国籍ではなく「住んでいる場所」で決まることです。日本に住所を持ち、名古屋で長く暮らしているブラジル国籍の方は、外為法の上では「居住者」ですから、この報告は必要ありません。永住者の方も定住者の方も同じです。報告が必要になるのは、ブラジル本国など海外に住んでいる方――たとえば、ブラジルに帰国したお兄さまやお姉さまが、名古屋の実家を相続で取得した場合です。

そして見落とされがちなのですが、財務省の公表資料では、相続や遺贈による取得も報告の対象と明記されています。お金を一円も払っていなくても、です。報告は取得から20日以内に、日本銀行を経由して財務大臣に提出します。報告を怠ったり虚偽の報告をしたりすると罰則(6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の定めもある、れっきとした法律上の義務です。日本語の様式での提出になるため、海外にお住まいの方がご自身で対応するのは正直なところ大変で、日本にいる親族や専門家が代理で提出する形が現実的でしょう。あわせて、不動産登記の仕組みでも所有者の国籍情報を把握できるようにする改正が予定されていると報じられており、「外国籍の方と不動産」をめぐる手続きは、透明化の方向へ静かに、しかし確実に動いています。

では、実務ではどう備えればよいのでしょうか。司法書士としてご提案したいのは、遺産分割協議の設計段階で「誰が不動産を取得するか」をよく考えることです。ブラジル在住の相続人が名古屋の不動産をそのまま取得すると、20日以内の外為法報告に始まり、固定資産税の納税管理人の届出、将来売却するときの非居住者としての税務(買主による源泉徴収)と、国境をまたぐ手続きが折り重なっていきます。もし最終的に売ってお金を分けるおつもりなら、**日本在住の相続人がいったん不動産を取得して売却し、代金を分け合う「換価分割」**という方法を協議書に盛り込むことで、海外在住の相続人は不動産名義を経由せず、こうした負担の多くを避けられます。どの形がよいかはご家族の事情と税金の見立てで変わりますから、まさにオーダーメイドの設計が生きる場面です。

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3.規制の行方と名古屋の相場――実家を「持ち続ける」か「売る」かを考える材料

最後に、宅地建物取引士としての立場から、規制をめぐる議論が名古屋の不動産の値段にどう関わるのか、そして相続した家をどうするかを考える材料をお話しします。

名古屋の地価は、いま堅調です。2026年の公示地価で名古屋市の平均は1平方メートルあたり約58万円、前年から3.67%の上昇となりました。リニア開業への期待を映す中村区は4.73%、当事務所のある中区は5.07%、再開発の続く熱田区は6.50%と、都心部と交通利便の高いエリアが相場を引っ張っています。「外国人の購入が規制されたら、値段が下がるのでは」と心配される方もいらっしゃいますが、外国人の購入は都心の新築マンションの数%程度との調査もあり、いま検討されている規制が実現しても、名古屋の住宅相場を大きく崩すとは考えにくい、というのが多くの見方です。値段を動かしている主役は、建築費の高騰と、エリアごとの需要の強さなのです。

ただし、長い目で見た景色は別です。日本全体では若い世代が減って住まいの買い手は細り、団塊の世代が高齢期を迎えるにつれ、空き家として市場に出る家は増えていきます。世界的な物価高で新築の値段が上がり、普通の勤め人のご家庭が家を買いにくくなる一方、投資マネーが向かう物件と実際に住むための物件とで、値段は別々の動きを見せるようになりました。名古屋市内でも、駅から遠い住宅地や建て替えの難しい古い家は、この先資産価値を保ちにくくなるおそれがあります。相続した実家が「値上がりを待てる立地」なのか、「時間とともに売りにくくなる立地」なのか――その見極めこそ、地元の相場を知る専門家の出番だと考えています。

そしてもう一つ、ブラジル国籍の方にぜひお伝えしたいのが、売るなら「日本に住んでいるうちに」が断然ラクだということです。将来ブラジルへ帰国したあとに名古屋の不動産を売ると、売主が非居住者となるため、買主が代金の10.21%を源泉徴収して税務署に納める仕組みが原則として働き、確定申告や納税管理人の手配など、手続きは格段に増えます。加えて、2026年4月からは前述の外為法の報告も意識しなければなりません。愛知県で暮らす外国籍の方は2025年6月末時点で約34万6千人と県人口の4.6%を超え、うちブラジル国籍の方は約6万1千人。全国では在日ブラジル人の過半数が永住資格を持ち、日本国籍への帰化を選ぶ方も年々続いています。名古屋に根を下ろす方が増える一方で、親の世代の家をどうするか、帰国も視野に入れて悩む方も確実に増えています。相続登記から売却の実行、税務の専門家との連携まで、登記の専門家(司法書士)と不動産取引の専門家(宅地建物取引士)が同じ一人の中にいる当事務所なら、一つの窓口で途切れなくお手伝いできます。

体験談――名古屋市港区・Mさん(50代)のケース

当事務所がお手伝いした事例に近い形でご紹介します(個人が特定されないよう内容は変えています)。

Mさんは日系ブラジル人二世で、永住資格を持ち、港区で暮らして30年になります。昨年、ブラジル国籍のお父さまが亡くなり、港区の一戸建てが残されました。相続人は、Mさんと、10年前にブラジルへ帰国したお兄さまの二人です。Mさんが当事務所の扉をたたいたきっかけは、意外にも、テレビのニュースでした。「外国人の土地取得に規制、と聞いて、父の家はもう私たちの名義にできないのかと、夜も眠れなくなってしまって」。

初回のご相談で、私たちはまず「外国籍を理由に相続できなくなる規制はありません」とお伝えし、ほっと肩の力を抜いていただきました。そのうえで、ブラジルから取り寄せる証明書の一覧と翻訳の段取り、お兄さまの署名証明の取得方法を一枚の工程表にして共有。あわせて、お二人とも「家は売って半分ずつにしたい」というご意向でしたので、ブラジル在住のお兄さまが不動産の名義を取ると2026年4月からの外為法報告や売却時の源泉徴収が重なることをご説明し、日本在住のMさんが単独で相続して売却し、代金を分ける換価分割の形で遺産分割協議書を整えました。相続登記ののち、ご自宅は約4か月で成約。「規制のニュースにおびえていた自分がうそみたいです。姉弟の縁もこじれずに済みました」と、ブラジルのお兄さまとのビデオ通話越しに、お二人で笑ってくださったのが印象的でした。

よくあるご質問(FAQ)

Q1.外国籍だと日本の不動産を相続できなくなる、という規制は本当にないのですか。

現在、そのような規制はありません。相続人の国籍を問わず、相続も相続登記も従来どおり可能です。政府は2026年中に外国人の土地取得に関する規制の骨格をまとめる方針と報じられていますが、検討の中心は安全保障上重要な土地や実態把握であり、一般のご家庭の相続を妨げる内容は現時点で示されていません。今後の議論は流動的ですので、最新情報には引き続きご注意ください。

Q2.ブラジルに住む兄が名古屋の実家を相続したら、何か手続きが必要ですか。

2026年4月1日以降、海外在住の方(非居住者)が相続で日本の不動産を取得した場合、取得から20日以内に日本銀行を経由して財務大臣へ報告する必要があります。無償の相続でも対象で、怠ると罰則の定めもあります。日本在住のご親族や専門家による代理提出が現実的です。

Q3.名古屋に住んでいる私(ブラジル国籍・永住者)が相続する場合も報告が要りますか。

いいえ。外為法の報告義務は国籍ではなく居住実態で決まります。日本に住所があり暮らしの本拠が日本にある方は「居住者」ですので、この報告は不要です。通常どおり相続登記を行えば足ります。

Q4.規制が始まる前に、相続した家を早く売ったほうがよいのでしょうか。

規制への不安だけを理由に慌てて売る必要はありません。名古屋の地価は2026年公示で平均3.67%上昇と堅調です。一方、将来ブラジルへ帰国するご予定があるなら、非居住者になってからの売却は源泉徴収などの手続きが大きく増えるため、日本にお住まいのうちに売却の段取りを整えておくことをおすすめします。立地ごとの見極めも含め、個別にご相談ください。

Q5.父が亡くなったのは10年前ですが、実家はまだ父の名義のままです。問題ありますか。

過去の相続にも相続登記の義務は適用され、期限は2027年3月31日です。正当な理由なく過ぎると10万円以下の過料の対象になりえます。ブラジルの証明書の取り寄せと翻訳には数か月かかることも珍しくありませんので、期限から逆算し、今すぐ準備を始められることをおすすめします。

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