「父が遺してくれたマンションを、どうすればいいのか分からないんです……」
最近、そうしたご相談を受ける機会が非常に多くなりました。
相続と聞くと、土地や戸建て住宅を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際には、都市部を中心に「マンション1棟」を相続するケースも少なくありません。特に、親が長年にわたり賃貸経営を行っていたような物件を受け継ぐ場面では、その登記や管理、税務上の対応において、戸建てや更地とは比べものにならないほどの複雑さが伴います。
「相続登記って、不動産の名義変更のことですよね?それだけで済むんじゃないですか?」
そう思われるのも無理はありません。しかし、実際にはそこに至るまでに多くの確認事項と法的な手続きが必要であり、特に1棟マンションの場合、その“規模”と“構造”が原因で思わぬところに落とし穴が潜んでいます。
たとえば、その建物が昭和の時代に建てられたものである場合、登記簿上の面積や構造、使用目的などが現在の実態と一致していないこともあります。また、土地が共有名義になっていたり、建物の一部を親族間で名義分けしていたりすると、相続の際には全員の同意が必要となり、スムーズに手続きが進まないことも少なくありません。
さらに、マンション1棟を相続するということは、「不動産を所有するだけでなく、継続的に賃貸経営を引き継ぐ」という側面もあります。つまり、単なる名義変更では済まされず、相続人は不動産オーナーとしての責任やリスクを負うことになるのです。賃借人との契約、修繕の責任、収益の管理、税金の納付──それらのことが、ある日突然、自分に降りかかってくるという現実に、多くの方が直面します。
特に注意が必要なのは、相続人が複数いる場合です。
誰が管理をするのか、名義はどう分けるのか、収益はどう配分するのか……といった点で意見がまとまらず、相続登記が長期間放置されてしまうこともあります。その結果、マンションの価値が目減りしたり、売却のチャンスを逃したりするなど、経済的な損失を招くことさえあります。
このように、1棟マンションの相続には、さまざまな視点からの正確な判断と、適切な専門家のサポートが不可欠です。
本記事では、司法書士かつ宅地建物取引士という不動産の法律実務の専門家の視点から、多くの方がつまずきやすい「1棟マンションの相続登記」の具体的な注意点と、解決のヒントを分かりやすく解説してまいります。
「相続はまだ先のこと」と思っていても、いざというときに慌てないよう、今から理解を深めておくことが大切です。
大切な資産を守り、トラブルを未然に防ぐために、ぜひ最後までご一読ください。