相続不動産売却のQ&A3選
〜司法書士兼宅地建物取引士がやさしく解説〜
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専門家によくある質問から厳選された3選をご紹介します!!
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Q1:相続した不動産は、すぐに売却できますか?

「すぐには売れない」が正解。まずは名義変更(相続登記)から始まります

不動産を相続した直後、「売ってしまいたい」と考える方は非常に多くいらっしゃいます。特に、相続した不動産が遠方にあって使い道がない場合や、老朽化して空き家となっている場合などは、維持費や防犯面の不安、近隣からの苦情などを避けるためにも、早めに売却したいというお気持ちはよく理解できます。

しかし、結論から申し上げますと、相続した不動産は「すぐには売れません」。なぜなら、不動産を売却するには、その不動産の「所有者」として正式に登記されている必要があるからです。

相続登記とは?なぜ必要なのか

不動産の所有者情報は「登記簿」に記録されていますが、相続が発生したからといって自動的に登記簿の内容が変わるわけではありません。亡くなった方(被相続人)の名義のままでは、売却や譲渡、担保設定といった法律行為が一切できません。

つまり、**まず行うべきことは「相続登記」**です。これは、不動産の名義を被相続人から相続人へと変更する法的な手続きで、これを済ませて初めて、売買契約や所有権移転登記などの売却に関する手続きが可能となります。

相続登記は義務に。期限もあります

以前までは、相続登記は義務ではありませんでした。しかし、不動産の名義変更がなされないまま何十年も放置され、所有者不明土地が社会問題となっていたことを受けて、2024年4月1日から「相続登記の義務化」が施行されました。

この制度により、相続人は、相続が発生したことを知った日から「3年以内」に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠った場合には、**10万円以下の過料(行政罰)**が科されることがあります。

ですから、「売却するかどうかはまだ決めていない」という方でも、相続登記だけは早めに済ませておくことを強くおすすめします。後回しにしてしまうと、相続人が高齢になったり、次の相続(再相続)が起きて関係者が増えたりして、手続きが非常に煩雑になる恐れがあるからです。

登記のためには「誰が相続するか」の確定が必要

相続登記をするには、まず「誰がその不動産を相続するのか」を確定する必要があります。具体的には、以下のいずれかの方法によって相続人と持分を決めます:

遺言書がある場合:原則として遺言書の内容に従って登記を行います。

遺産分割協議を行う場合:相続人全員で話し合って不動産の分け方を決め、その内容を協議書にまとめます。

法定相続分による場合:協議や遺言がない場合は、民法に定められた相続割合(法定相続分)で登記します。

話し合いがまとまらない場合は、登記ができないため売却も先延ばしになってしまいます。このため、遺産分割を早期に行い、書面(遺産分割協議書)に残すことが、スムーズな売却への第一歩になります。

相続登記後も手続きは多い。売却前に確認すべきこと

無事に相続登記が完了したからといって、すぐに買い手が現れて売却が終わるわけではありません。不動産を売るには、その物件の現況を確認し、法的・物理的な問題がないかどうかをチェックする必要があります。

たとえば:

建物の老朽化やシロアリ被害などの瑕疵(かし)の有無

建築基準法に適合しているかどうか(再建築の可否)

越境や境界未確定といった土地のトラブルの有無

賃借人がいる場合の対応(賃貸中物件の売却)

これらを把握せずに売却を進めてしまうと、売却後にトラブルが発生したり、思っていたよりも安い価格でしか売れなかったりするケースもあります。司法書士や宅地建物取引士といった不動産の専門家に相談しながら進めることが、安全で納得のいく売却への近道です。

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Q2:兄弟で共有名義になった不動産、売却はどう進める?

売却には「全員の合意」が必要。話し合いの難しさとその解決策

相続で不動産を取得した場合、相続人が複数いるケースでは、その不動産が**「共有名義」**になることが多くあります。たとえば、父親名義の実家を、子ども3人で相続した場合、法定相続分に応じて3分の1ずつの持分を登記することになります。

このような共有状態の不動産は、一人の判断で自由に売却することはできません。売却には、共有者全員の合意が必要となります。ここが、共有名義不動産を売却する際の大きな壁の一つです。

「誰かが反対していると売れない」は本当です

共有不動産を売る場合、単独でできるのは「自分の持分のみを売却する」ことです。しかし、実際に持分だけを第三者に売却するのは現実的には非常に難しく、買い手がほとんど現れないのが実情です。

つまり、実用的に不動産を売却するには、共有者全員が話し合って、共同で一括売却する必要があります。

この際、問題となるのが以下のようなケースです:

一部の相続人が売却に反対している

他の相続人と連絡が取れない、居場所が不明

売却価格や条件について意見が分かれている

特定の相続人が感情的に対立しており協議が進まない

こうした状況になると、売却の話は停滞し、不動産は放置されたままとなり、固定資産税や管理コスト、空き家リスクだけが積み重なってしまいます。

話し合いが難航する場合は「遺産分割協議」や「共有物分割請求」を

相続開始直後でまだ名義変更(相続登記)をしていない場合は、まず遺産分割協議を行って、「不動産を一人が取得する」か「売却を前提に共有状態で登記する」かを話し合う必要があります。

遺産分割協議がまとまり、誰か一人の単独名義に変更できれば、その後の売却もスムーズです。一方、既に共有名義で登記されている場合には、後から分割協議をやり直すことはできませんので注意が必要です。

また、どうしても話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に「共有物分割請求」の調停または訴訟を申し立てることも検討されます。この手続きにより、不動産を現物分割(実際に分ける)、代償分割(誰かが取得して金銭で清算する)、換価分割(売却して現金で分ける)といった方法で解決を図ることができます。

ただし、裁判手続きは時間も費用もかかるため、できる限り話し合いでの解決が望ましいのは言うまでもありません。

「売却代金をどう分けるか」も事前に確認を

売却そのものが共有者全員の合意で進んだとしても、次の壁となるのが**「売却代金の分配方法」**です。原則として、登記上の持分割合に応じて代金を分けることになりますが、相続の過程で「自分が多く管理をしていた」「維持費を支払っていた」などの事情を理由に異なる分配を希望される方もいらっしゃいます。

また、売却前にリフォームや測量などの費用がかかった場合、それを誰が負担するかという点でも揉める可能性があります。

このようなリスクを避けるためには、事前に「売却後の代金配分」「必要経費の負担割合」などについて文書にしておくことが大切です。司法書士などの専門家が間に入り、公正な形で協議書を作成しておくと、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

感情的な対立や無関心も、手続きを難しくする要因

相続というのは、財産の問題であると同時に、家族の感情が交錯する場面でもあります。長年疎遠だった兄弟、介護の負担を一人で担ってきた不満、特定の相続人への不信感など、不動産の共有が人間関係のこじれを浮き彫りにしてしまうことは珍しくありません。

また、逆に「どうでもいい」「任せるから勝手にやってくれ」と言ってくる相続人がいるケースもあります。こうした無関心型の共有者が後になって異議を唱えるというトラブルも実際にあります。

そのため、売却を進める際には、「形式的な同意」ではなく、「真に納得した上での合意」を取り付けることがとても重要です。後から「聞いていない」「そんな金額で売るなんて知らなかった」と言われることのないよう、文書で残す、専門家を交えて確認するというプロセスを丁寧に踏んでいきましょう。

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Q3:相続した空き家を売ると税金がかかる?

相続不動産の売却には「譲渡所得税」がかかる場合があります

相続した空き家を売却するとき、「思わぬ税金がかかるとは知らなかった」と驚かれる方は少なくありません。不動産を売ったときには、売却益(譲渡益)に対して「譲渡所得税」という税金が課される可能性があります。

譲渡所得とは、簡単に言えば「売却価格」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた利益のことです。つまり、親から相続した家を売って利益が出た場合、その利益部分に対して所得税・住民税が課税されるのです。

しかし、相続によって取得した空き家の場合、**「取得費が不明」**であることが多く、税務上は「取得費ゼロ」とみなされることもあります。すると、売却代金のほとんどすべてが「利益」とされてしまい、想像以上の税負担が発生してしまうこともあります。

「空き家の3,000万円特別控除」とは?制度の概要と活用条件

こうした問題を軽減するために、国が用意しているのが「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」という制度です。これは、一定の要件を満たした相続空き家について、その売却益から最大3,000万円までを非課税にできる特例制度です。

この特例が適用されれば、売却価格がある程度高くても課税されない、あるいは課税されてもごく少額で済む可能性があります。

ただし、この特例には細かな適用要件があり、すべてを満たしていないと控除は一切認められません。主な要件は以下の通りです(※2025年10月時点の制度に基づいて記載していますが、今後法改正等の可能性があるため、申告前には必ず最新の税制をご確認ください):

【主な適用条件】

被相続人(亡くなった方)が、一人暮らしで居住していた家屋であること

建物が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(旧耐震基準の建物)

相続後、その建物に誰も居住していないこと(空き家であること)

売却価格が1億円以下であること

建物を耐震改修するか、解体して更地にすること

売却が相続開始から3年目の年の年末までに完了していること

上記のように、特例を受けるには「相続後に誰も住んでいないこと」や「建物の耐震性」「売却の期限」など、複数の条件をクリアする必要があります。また、税務署に確定申告をする際には、これらの条件を満たしていることを証明する書類(登記事項証明書、解体工事証明書など)も必要になります。

制度が使えないケースも。使えるかどうか、早めの確認を

この3,000万円控除は非常に有利な制度ですが、**「条件を一部満たしていないだけで適用できない」**という厳しさもあります。

たとえば、以下のようなケースでは特例が使えなくなる可能性があります:

被相続人が施設(介護老人ホーム等)に入居していた

建物が親族によって居住用として使われていた

相続から3年目の年末を過ぎて売却した

建物を解体していないまま売却した

敷地の一部が第三者と共有になっている

また、売却時点では制度の対象になると思っていても、確定申告の際に書類が不十分だったり、要件を誤解していたために適用できなかったというトラブルも実際に起こっています。

そのため、空き家の売却を検討する際には、事前に司法書士や税理士、宅地建物取引士などの専門家に相談し、適用の可否や必要な準備についてしっかり確認しておくことが非常に重要です。

空き家の売却は、早めの行動がカギ。放置にはリスクも

相続した空き家をそのまま放置していると、税金の問題だけでなく、以下のような社会的・法的なリスクも発生します:

空き家特例の適用期限を逃す

老朽化により「特定空家」に指定され、固定資産税が増額される

倒壊や火災などの事故リスクが高まる

近隣住民とのトラブル(景観・治安・不法侵入など)

建物の価値が下がり、売却がますます難しくなる

現在、日本国内では高齢化の進展と人口減少により、空き家問題が深刻化しています。総務省の調査によると、全国の空き家は約849万戸(住宅総数の13.6%)にのぼり、今後も増加が見込まれています。こうした状況下では、「相続した家がいつまでも売れず、価値が下がり、税金だけがかかり続ける」という負のサイクルに陥るリスクも無視できません。

そうならないためにも、相続した不動産の売却は、早い段階から計画的に動き出すことが重要です。

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