不動産に「取扱説明書」はありません ― 名古屋で個人間売買をする前にそろえたい“3つの説明書”を司法書士が解説
ごとう司法書士事務所
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不動産の取扱説明書は、権利・現況・お金の3冊に分けて考えると整理できます。
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1冊目「権利の取扱説明書」― 登記簿は、その土地が歩んできた履歴書です 過去をたどれば、未来のトラブルが見えてきます。

家電の取扱説明書に「型番」や「製造年」が書かれているように、不動産にも素性を記録した一冊があります。それが法務局で取得できる「登記簿(登記事項証明書)」です。ここには、いま誰が所有しているのか、過去に誰の手を渡ってきたのか、住宅ローンなどの担保(抵当権)が残っていないか、といった権利の履歴がすべて記録されています。

個人間売買でいちばん怖いのは、「売主だと思っていた人が、実は正式な所有者ではなかった」というケースです。たとえば名古屋市内でも、こんな例は少なくありません。親から子へ「もう名義は渡したから」と口約束で受け継いだつもりの土地が、登記簿上はまだ亡くなったお父様の名義のまま。いざ売ろうとしたら、相続人全員の同意がなければ一歩も前に進めなかった――。こうした「名義の置き去り」は、ご高齢の世代から相続が重なるほど複雑になります。

ここで2024年4月から始まった大きな変化に触れておきます。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内の「相続登記」が義務化され、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料が科される可能性があります。すでに昔に相続が起きていた不動産も対象で、その場合は2027年3月31日までが申請の期限とされています(法務省の案内による)。「うちは昔から住んでいるだけだから関係ない」と思っていた土地が、実は手つかずのまま、という名古屋のご家庭は今も数多くあります。

権利関係の確認と、所有権を正しく移す「所有権移転登記」は、まさに司法書士の専門分野です。登記簿という履歴書を一緒に読み解き、売買の前に名義が整っているかを点検する――これが取扱説明書の1冊目です。

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2冊目「現況の取扱説明書」― 境界と設備は、引き渡した後に物を言います “見えている広さ”と“登記された広さ”は、しばしば違います。

家電なら「サイズ」「付属品」「消耗品の交換時期」が説明書に書かれています。不動産でこれにあたるのが、土地の境界、建物の状態、そして設備の現況です。ところが、ここは個人間売買でもっとも説明書が抜け落ちやすい部分でもあります。

土地の境界は、ブロック塀や植木で「だいたいここまで」と思い込んでいても、登記上の面積や隣地との境界標とずれていることがよくあります。お隣との関係が良好なうちは問題になりませんが、売買で所有者が変われば話は別です。「塀の位置が境界だと思って買ったのに、測ってみたら30センチ内側だった」というような行き違いは、当事者同士の売買だからこそ後に残りやすいのです。境界が曖昧なまま売るのか、確定測量をしてから売るのかは、売主・買主の双方が引き渡し前に決めておくべき大切な“取扱説明”です。

建物についても同じです。雨漏りの跡、給湯器やシロアリの状況、増築部分が登記されているか――。新築の戸建てを売り買いすることはまれで、個人間売買の多くは築年数の経った住宅です。名古屋市の住宅・土地統計調査では市内の住宅は約131万戸にのぼり、空き家も一定数を占め続けています。長く空き家だった家ほど、見た目だけでは分からない不具合が隠れています。だからこそ、どの設備がどんな状態で引き継がれるのかを「付帯設備表」「告知書」といった書面にまとめておくことが、後の「言った・言わない」を防ぎます。

司法書士は登記を通じて建物の「登記された姿」と「実際の姿」が一致しているか(未登記の増築がないかなど)を確認できる立場にあります。現況をありのまま書き残す――これが2冊目の取扱説明書です。

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3冊目「お金と約束の取扱説明書」― 引き渡しの後にも、ページは続きます 売買代金だけでは、お金の話は終わりません。

最後の一冊は、お金と、引き渡し後の取り決めについての説明書です。家電を買えば本体価格のほかに送料や保証の話があるように、不動産にも代金以外の費用と、ずっと続く約束事があります。

まず、売買にともなう税金です。買主側には、名義を移すときの登録免許税や、後日かかる不動産取得税があります。土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は、本則2.0%のところ1.5%に軽減する特例が2029年3月31日まで延長されています(令和8年度税制改正による)。売主側には、利益が出れば譲渡所得税がかかることがあります。ただし税金は、物件の用途や所有期間、各種の特例の適用によって金額が大きく変わり、また制度も毎年見直されます。具体的な税額は、必ず税務署や税理士など専門家にご確認ください(この記事の内容は2026年6月時点の情報です)。

次に、引き渡し後も続く約束事です。固定資産税の精算(日割り)、ライフラインの名義変更、そして名古屋のように地価が上がり続けているエリアでは、価格をいくらに設定するかも重要です。名古屋市の地価は住宅地・商業地ともに近年プラスが続き、特に中区など都心部は実勢価格でも県内有数の水準です。身内同士だからと相場とかけ離れた安い価格にすると、その差額が「贈与」とみなされ、思わぬ贈与税につながることもあります。価格の根拠を残しておくことも、立派な“取扱説明”の一部です。

そして、これらすべてを一冊にまとめあげる中心となるのが、売買契約書です。司法書士・宅地建物取引士として、私たちは権利の移転を安全に完了させると同時に、お金と約束のページに抜けがないかを確認します。お客様お一人おひとりの事情に合わせて、必要なところだけを、丁寧にお手伝いする――それが私たちの考える「不動産の取扱説明書づくり」です。

不動産は、買って終わりではなく、そこから暮らしが始まります。だからこそ、次にその家を受け継ぐ方のためにも、しっかりした取扱説明書を一冊そろえてからお引き渡しください。ご不安な点があれば、名古屋市中区の私たちにいつでもお声がけください。

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