空き家にしない、ご家族で困らないための準備と第一歩
名古屋でも、高齢化と住まいの問題は確実に進んでいます。2026年は、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる節目の年でもあります。親世代が持つ住まいを「次にどうするか」を、多くのご家庭が同時に考える時期に入っているのです。
愛知県の調査でも、高齢者向け設備のある住宅は全体の半数を超えるまでに増えました。一方で、名古屋市内の不動産は、栄など中心部と郊外とで価格の差が広がる「二極化」も指摘されています。動かしやすい立地のうちに、判断できるうちに整理しておくことが、空き家化を防ぎ、ご家族が将来困らないことにつながります。名義をそのままにして空き家になってしまうと、固定資産税の負担だけが続き、いざ売ろうとしたときには相続も重なって手続きが何倍にも複雑になりがちです。
では、元気なうちに何をしておくとよいのでしょうか。まずは、登記簿(登記事項証明書)でご自宅の名義が今のご本人になっているかを確かめておくこと。住所変更や、過去の相続の登記が済んでいないと、それだけで売買が止まります。あわせて、固定資産税の納税通知書や権利証(登記識別情報)、境界がわかる資料などを一か所にまとめておくと安心です。そして何より、「この家を将来どうしたいか」というご本人のお気持ちを、ご家族で早めに話し合い、できれば書面に残しておくこと。この“意思の記録”が、後々ご家族を何より助けてくれます。
ご相談でよくいただくのが、「親はまだしっかりしているが、いつ相談すればいいのか」というお声です。答えはシンプルで、「気になった今」が一番です。判断能力には波があり、一度大きく進むと後戻りはできません。早すぎるということはありません。「母が施設に入る前に、長年暮らした家を娘に譲っておきたい」といったご相談も、お元気なうちにお越しいただけたからこそ、個人間売買というかたちで穏やかにまとめることができました。
司法書士は、登記の実務を通じて「ご本人の意思をどう確認し、どう書面に残すか」を最もよく知る立場にあります。個人間売買が今のうちに進められるのか、それとも家族信託や任意後見で備えるべきなのか。当事務所は宅地建物取引士としての視点も併せ持ち、ご事情をうかがいながら、おひとりおひとりに合ったかたちを一緒に考えます。「まだ元気だから、急がなくていい」。その「まだ元気なうち」こそが、実は最も多くの選択肢が残されている、いちばん大切な時間です。気になることがあれば、どうか先延ばしにせず、お早めにお声がけください。
よくあるご質問
Q1. 親が「軽い物忘れ」程度なら、個人間売買はできますか?
「物忘れがある=売買できない」ではありません。判断の基準は診断名ではなく、「この不動産を、この相手に、この値段で売るとどうなるか」をご本人が理解できているか(意思能力)です。軽度であれば取引できることも多い一方、波があって決済日に状態が下がることもあります。だからこそ、お元気なうちに前へ進めておくのが安心です。気がかりなときは、早めに一度ご相談ください。
Q2. 認知症と診断されたら、家族が代わりに売ることはできますか?
ご家族であっても、ご本人に意思能力がなければ代理で売ることはできません。有効な委任状を作ること自体ができないためです。この段階では、家庭裁判所を通じた法定後見の利用が基本となり、居住用不動産の売却には裁判所の許可も必要です。時間も手間もかかり、ご家族の希望どおりに進むとは限らないため、「診断の前」に動けるかどうかが大きな分かれ目になります。
Q3. 家族信託と任意後見、個人間売買は、どれを選べばよいですか?
唯一の正解はなく、ご家族の関係・不動産の使い方・税金の見通しによって変わります。たとえば「今すぐ子へ譲りたい」なら個人間売買、「当面は親が住み、将来は柔軟に動かしたい」なら家族信託、「判断力が落ちた後の生活全般も支えてほしい」なら任意後見、といった具合です。当事務所では、登記と宅建の両面からご事情をうかがい、おひとりおひとりに合った組み合わせをご提案します。
※本記事は2026年6月時点の情報をもとに一般的な内容をわかりやすく解説したものです。成年後見制度の改正は施行前であり、今後内容が変わる可能性があります。税務(贈与税・譲渡所得税など)の取扱いや個別のご事情に応じた最適な方法は、税理士・司法書士などの専門家に個別にご確認ください。