【名古屋】不動産の個人間売買は「元気なうち」が成否の分かれ道|認知症になる前に司法書士が伝えたいこと
ごとう司法書士事務所
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個人間売買で見落とされがちな「判断能力」と、その“期限”についてお話しします。
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決済の日に、司法書士が必ず確認していること ― 売買を止める「最後の関門」

不動産の売買では、お金を支払い、名義(所有権)を買主に移す「決済」という日が必ずあります。このとき、登記を担当する司法書士は、書類にハンコを押すだけの立会人ではありません。

私たち司法書士は、決済の場で売主ご本人にお会いし、「ご自身の意思で、この不動産を売るのですね」と確認します。これは法律で求められた本人確認・意思確認であり、ここを通らなければ所有権移転登記はできません。

ここに、個人間売買の大切なポイントがあります。たとえ契約書を交わした時点ではしっかりされていても、決済の日までに認知症が進み、ご本人がご自身の判断を示せない状態になっていれば、司法書士は登記を進めることができません。結果として、お金を払ったのに名義が移らない、という事態に陥りかねないのです。

実際の裁判でも、売却によって自分の住まいを失うという重大な意味を理解できないほど症状が進んでいたケースで、売買契約そのものが「無効」と判断された例があります。「家族なのだから」「本人も昔は売ると言っていたから」という理由では、残念ながら手続きは前に進みません。意思能力がなければ、ご家族が代わりに委任状をつくることもできないのです。

つまり、個人間売買が成立するかどうかの最後の関門は、価格交渉でも書類集めでもなく、「決済の日に、ご本人がご自身の言葉で意思を示せるか」。ここに尽きるのです。

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2026年、成年後見制度が変わっても「間に合わない」理由 ― 制度を待つより、備えるという発想

「もし認知症になっても、成年後見制度を使えば売れるのでは」とお考えになる方もいらっしゃいます。たしかに制度は動いています。

2026年4月、政府は成年後見制度を大きく見直す民法改正案を閣議決定しました。これまで「一度始めたら本人が亡くなるまで原則やめられない」とされてきた終身制を改め、「介護費用のために空き家を売る」といった目的が果たされれば制度を終了できるようにする、といった柔軟化が柱です。施行は2028年ごろの見込みとされています。

この改正は、認知症による「資産凍結」のリスクを和らげる前向きな一歩です。ただ、誤解してはいけない点があります。後見制度を使って居住用不動産を売るには、今後も家庭裁判所の関与(許可など)が想定され、時間も手間もかかります。そして何より、後見人は「ご本人にとって必要かどうか」を基準に動くため、「子どもに譲りたい」「この相手に売りたい」というご本人やご家族の希望どおりに進むとは限りません。個人間売買で実現したかった自由なかたちは、後見制度のもとでは難しくなることが多いのです。

だからこそ、判断能力がしっかりしている「元気なうち」に動くことに、大きな意味があります。たとえば、ご本人の意思がはっきりしているうちに個人間売買を済ませてしまう。あるいは、将来に備えて家族信託や任意後見といった仕組みを整えておく。家族信託であれば、親御さんが認知症になった後も、あらかじめ託された家族が裁判所の許可なく不動産を動かせる場合があります。どの方法がふさわしいかは、ご家族の事情によって本当にさまざまです。

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名古屋の「いま」だからこそ、元気なうちに ― 空き家にしない、ご家族で困らないために

空き家にしない、ご家族で困らないための準備と第一歩

名古屋でも、高齢化と住まいの問題は確実に進んでいます。2026年は、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる節目の年でもあります。親世代が持つ住まいを「次にどうするか」を、多くのご家庭が同時に考える時期に入っているのです。

愛知県の調査でも、高齢者向け設備のある住宅は全体の半数を超えるまでに増えました。一方で、名古屋市内の不動産は、栄など中心部と郊外とで価格の差が広がる「二極化」も指摘されています。動かしやすい立地のうちに、判断できるうちに整理しておくことが、空き家化を防ぎ、ご家族が将来困らないことにつながります。名義をそのままにして空き家になってしまうと、固定資産税の負担だけが続き、いざ売ろうとしたときには相続も重なって手続きが何倍にも複雑になりがちです。

では、元気なうちに何をしておくとよいのでしょうか。まずは、登記簿(登記事項証明書)でご自宅の名義が今のご本人になっているかを確かめておくこと。住所変更や、過去の相続の登記が済んでいないと、それだけで売買が止まります。あわせて、固定資産税の納税通知書や権利証(登記識別情報)、境界がわかる資料などを一か所にまとめておくと安心です。そして何より、「この家を将来どうしたいか」というご本人のお気持ちを、ご家族で早めに話し合い、できれば書面に残しておくこと。この“意思の記録”が、後々ご家族を何より助けてくれます。

ご相談でよくいただくのが、「親はまだしっかりしているが、いつ相談すればいいのか」というお声です。答えはシンプルで、「気になった今」が一番です。判断能力には波があり、一度大きく進むと後戻りはできません。早すぎるということはありません。「母が施設に入る前に、長年暮らした家を娘に譲っておきたい」といったご相談も、お元気なうちにお越しいただけたからこそ、個人間売買というかたちで穏やかにまとめることができました。

司法書士は、登記の実務を通じて「ご本人の意思をどう確認し、どう書面に残すか」を最もよく知る立場にあります。個人間売買が今のうちに進められるのか、それとも家族信託や任意後見で備えるべきなのか。当事務所は宅地建物取引士としての視点も併せ持ち、ご事情をうかがいながら、おひとりおひとりに合ったかたちを一緒に考えます。「まだ元気だから、急がなくていい」。その「まだ元気なうち」こそが、実は最も多くの選択肢が残されている、いちばん大切な時間です。気になることがあれば、どうか先延ばしにせず、お早めにお声がけください。

よくあるご質問

Q1. 親が「軽い物忘れ」程度なら、個人間売買はできますか?

「物忘れがある=売買できない」ではありません。判断の基準は診断名ではなく、「この不動産を、この相手に、この値段で売るとどうなるか」をご本人が理解できているか(意思能力)です。軽度であれば取引できることも多い一方、波があって決済日に状態が下がることもあります。だからこそ、お元気なうちに前へ進めておくのが安心です。気がかりなときは、早めに一度ご相談ください。

Q2. 認知症と診断されたら、家族が代わりに売ることはできますか?

ご家族であっても、ご本人に意思能力がなければ代理で売ることはできません。有効な委任状を作ること自体ができないためです。この段階では、家庭裁判所を通じた法定後見の利用が基本となり、居住用不動産の売却には裁判所の許可も必要です。時間も手間もかかり、ご家族の希望どおりに進むとは限らないため、「診断の前」に動けるかどうかが大きな分かれ目になります。

Q3. 家族信託と任意後見、個人間売買は、どれを選べばよいですか?

唯一の正解はなく、ご家族の関係・不動産の使い方・税金の見通しによって変わります。たとえば「今すぐ子へ譲りたい」なら個人間売買、「当面は親が住み、将来は柔軟に動かしたい」なら家族信託、「判断力が落ちた後の生活全般も支えてほしい」なら任意後見、といった具合です。当事務所では、登記と宅建の両面からご事情をうかがい、おひとりおひとりに合った組み合わせをご提案します。

※本記事は2026年6月時点の情報をもとに一般的な内容をわかりやすく解説したものです。成年後見制度の改正は施行前であり、今後内容が変わる可能性があります。税務(贈与税・譲渡所得税など)の取扱いや個別のご事情に応じた最適な方法は、税理士・司法書士などの専門家に個別にご確認ください。

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