持分移転登記・価格の付け方・連絡が取れない共有者への対応
共有を解消する代表的な方法が、ある共有者が他の共有者の持分を買い取り、一人の名義にまとめるやり方です。たとえば実家に住み続けたい長男が、弟・妹の持分を買い取って単独所有にする、といった形が分かりやすいでしょう。このとき行うのが、持分を売主から買主へ移す「持分移転登記(持分全部移転登記)」です。所有権の名義変更を専門に扱う司法書士が、契約から登記までを通してお手伝いできる手続きです。
費用面では、登録免許税がかかります。売買による移転の場合、原則は不動産の固定資産税評価額(持分に対応する分)の2%ですが、土地については軽減措置により1.5%とされており、この特例は2029年3月31日までの登記申請に適用されます(令和8年度税制改正大綱で延長が示されています)。また、持分を売った側には、利益が出れば譲渡所得税がかかります。保有期間が5年を超える長期譲渡なら税率はおおむね20%、5年以下の短期なら約39%と差が大きく、ここに復興特別所得税(2037年まで)も加わります。
注意したいのが価格の付け方です。「身内だから」と相場よりかなり安く持分を譲ると、時価との差額が贈与とみなされ、買主に贈与税がかかる「みなし贈与」の問題が生じることがあります。いくらまでなら安全という明確な金額基準は法律になく、税務署が個別に判断しているのが実情ですので、固定資産税評価額や相続税路線価などを根拠に価格を決めることが大切です。なお、共有者が自分の持分を「放棄」した場合、その持分は他の共有者のものになりますが、これも税務上は贈与として扱われる点に気をつけてください。
もう一つ、共有者の中に連絡の取れない方や行方の分からない方がいると、話し合い自体が進みません。こうした場面に備えて、2023年4月施行の民法改正で、所在の分からない共有者の持分を、裁判所の手続きを経て他の共有者が取得できる「所在等不明共有者の持分取得制度」が新設されました(相続による共有の場合は相続開始から10年経過後に利用できるなどの要件があります)。どうしても話し合いがまとまらないときの最終手段としては、裁判所に共有物分割を求める道も残されています。税務や具体的な手続きは事案により異なり、制度改正でも変わり得るため、詳しくは税理士や所轄の税務署にもご確認ください(本記事は2026年6月時点の情報にもとづいています)。